ほんわかご近所コメディ、というコメントが付きそうな癒し系の本書。主人公の麻子は借金取りから逃げ回る生活の最中、コンビニの店長に拾われ、恩返しをするかの如く、街の人々を癒しの魔法で救っていく。しかし2巻では、頑張って努力してもどうにもならないこともある現実をさらっと描写している。
老舗洋菓子店が、老齢の店長の引退と共に閉店することを知った麻子が、引退を阻止しようと、店長にコンビニ用にケーキを卸してくれないかと頼み込み、承諾を得て、企画は上手くいくかに思えたが、様々な事情により販売するまでに至らず、大好きなケーキを街の人々にも食べてもらいたい、という切実な願いは諦めざるを得ない。ふわふわした優しげな絵柄と、このリアリティのギャップにちょっと驚いていたら、物語は思わぬ方向へ。店長のケーキは違う形で、この街に残っていく・・・
普通のさびれかけた商店街で暮らす、ごく普通の人々の日常の悲喜こもごもを、さり気なく描写した後、それならこの麻子=座敷童の役割は何か?を読者にも考えさせる趣向だ。しかしこちらが考える暇もなく、麻子はどんどん思いつくままに行動する。良かれと思って行動した事が裏目に出たり、誤解されたりしながらも、決して心と心の繋がりを諦めない麻子に、人々は少しずつ心を動かされていく。
傷ついた人間、寂しさを抱えた人間にとって、この街は無条件で受け入れてくれる優しい街になりつつあるのだ。