二ノ宮智子の推薦帯で、「あったかいおでんのような漫画デス」と書いてあり、出版社の思惑通りに即買いしてしまった。正直言って絵はそんなに好みではないし、上手いとも思わないが、内容にマッチした、ふんわりとした優しさと温かさに包まれていると思う。
主人公、神子麻子20歳、親が一億もの借金を作り、悪徳金融業者から逃げ回る生活を送り続けること7年、臓器売買とソープへ売られる恐怖に脅えながら、親とも離れ離れになった少女が、1年間のマグロ漁船での働きを終えて陸に上がった、初めての街・・・という長い前振りである。物語は、行き倒れていた麻子をつぶれかけたコンビニの店長が拾い、労働と引き換えにコンビニのバックヤードに住居を与え、コンビニの再建を図るというもの。この麻子、こんなに不幸な生い立ちにも関わらず、全く影の指す部分のない、明るく前向きで素直で思いやりのある、正に神の子なのが驚く。そして彼女に関わる店員達や近所の住民も、どこの田舎に行けばこんなに思いやりのある人ばかりが住む街に行けるのか、と思える程の善人ばかり。互助会の精神が生きている。みんなが善人では話がつまらないではないか、と思いながら読み進めると、ちゃんと主人公の代わりに負の担当脇役が存在して、彼らは悩み、失敗しながらも麻子の影響で前向きに考えを改めていくようになる。リストラされて家族に逃げられた、中年男の夜勤明けに「おかえりなさい」と笑顔で迎えられる苦労人の少女を見ていると、自然に微笑んでいる自分に気付く。読者までも癒してくれるこの漫画、「あったかいおでん」とは言いえて妙だなあとつくづく感心させられる。