「まえがき」で述べられている通り、「文化経済学」「文化経営学」「経営人類学」的な視点から、メジャー4上流としてマンガ、アニメ、ライトノベル、ゲームという従来、なかなか真剣に取り上げられることのなかったコンテンツを分析しているので、今までの「学術書」「教科書」や「ヲタク論」とは全く違うアプローチが初めて可能となっている。
はたして市場原理が働いているのか、いないのか当事者でもなかなか理解できない「ユーザ参加型の創作と評判の相互作用に依存する超多様性市場」における「株主配当の最大化を必ずしも目的としない文化的企業(業界)」の綿密な調査は特に必読。メジャーのJ−POPにおける「ライブハウス」、商業誌における「コミケ」「同人誌」の役割を具体的に指摘する事例は、知りうる限りまさに「本邦初公開」といえよう。
そしてこれら日本独自の進化を遂げた源流は「俳句、狂歌、歌舞伎、絵双紙が趣向を共有するメディアミックス」である、という文化論はまさに意表をつきながらしっかり同意できる。
ただし、各章が分担執筆のため若干のバラツキも感じられる。特に「第2章」は、この分野に関心があれば当然、「デジタルコンテンツ白書」ぐらいは手元にあるのでわざわざ引用を続けなくても結構だし、製作委員会方式の説明のなかで「座組」という用語は今はもう死語。(新しい横文字が大好きな人ばかりなので「スキーム」にとって代わられています)著作権系の解説も事例が少なく、弱い気も・・・。
もちろん、これらの点を補って余りある労作なので「コンテンツ系」「マーケティング系」「放送と通信の融合論」などを志す学生は本書から始めることが現時点での近道であり、すでに道半ばにいる研究者にとっても新たな「気づき」が生まれることとなろう。