本書購入前、別の書籍である「コンテンツビジネスの会計実務 IFRS対応版」(新日本有限責任監査法人)とどちらを購入するか迷っていた。目次を見て、本書の購入を決定した。2冊とも日本の大手監査法人に所属する実務家らによって執筆されたものである。本書を選んだ理由は、本書の第1編でビジネスの側面からコンテンツ業界の特徴や権利関係等の説明がなされていた点である。もう一冊の書籍では、いきなり各論が始まっていた。「映画・映像ビジネス」、「ゲームビジネス」、「放送ビジネス」等とあり、コンテンツビジネスとは何か、という大枠の説明についての記述の有無は目次から読み取れなかった。その点、本書は、まず、コンテンツビジネスの特徴、ビジネスモデル、ビジネス環境等の説明がある。そして、コンテンツビジネスの理解に不可欠な著作権法の解説に1章が割かれている。著作権法に馴染みがない読者にとっては、非常に有用な解説となっている。
本書の内容は、コンテンツビジネス全般の解説の後、第2編として各論に移る。出版ビジネス、音楽ビジネス、映画ビジネス、ゲームビジネス、放送ビジネス、コンテンツ発信(インターネット、携帯電話等を通じてコンテンツをユーザーに配信し、サイトへの広告掲載およびユーザーへのサービスの提供に応じて収益を獲得する事業)の各分野に関する会計・監査を説明している。最後の第3編では、コンテンツビジネスにおける監査について短い解説がある。ここでいう監査は、監査法人や公認会計士による外部監査のみならず、内部監査や監査役監査(監査委員会監査)も含まれている。更に、非常に簡単であるが、監査の歴史の記載がある。
本書は、コンテンツビジネスに馴染みが薄い読者にとって、コンテンツビジネスの概略と会計実務の理解に役立つものである。ただ、各章はそれぞれの業界に詳しい実務家が執筆していると思われ、業界外の読者には理解しにくい専門用語を説明もなく使用している場面があったり、文章の意味が曖昧で文意を推察しなければならない場面もあったりした。それらの点を除けば、十分満足できる一冊である。(2011/7/16)