当初の3人の女性は、どうしようもなく軽く描かれている。
政情不安定な地に、バカンスと買い物をしに来る時点で、既に軽過ぎる。
しかし、3人は軽いばかりではなかった。
その後に直面する場面場面での、3人の行動は頼もしい。
この村の文化は、日本とは天地程異なるが、生きるためとは言え、うまく順応しようとする。
3人のうち、一見最も思慮深い様で、実はその逆だと感じるのが医者の祝子だ。
村の一人の老人の臨終に際して、医療行為を強要して、人々の顰蹙を買うという下りがある。
この村では、病院でのいくつかのケースとは異なり、人が人らしく死ねる。
医療に対する、祝子の様な上辺だけの理想は、時に有害だ。
物語は、生きて日本に帰れるのか?というスリリングな綱渡りの連続だが、
3人は価値観の相違の狭間で悩み、順応しようとする。
このあたりに、読み応えを感じる。
著者の名著「弥勒」は非常に重いテーマを扱っているが、本書も根底では似た部分がある。
しかし、比べて本書は雰囲気が軽く、ずっしりとした重みはあまり感じない。
それはそれで、気軽に読めるという利点もある。
下巻での結末はある程度想像出来るが、
下巻でも、展開にスリルがあり、印象的な結びとなっている。
また、各章に付記された小タイトルは、なかなか魅力がある。
テーマは重いが「楽しめる」作品だ。