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映画化され日本公開もなされたエメラルド王・早田英志をめぐる臨場感あふれるエピソードを序章に配し、第1章以降、独立期から現代のビオレンシア時代へといたる通史、反政府ゲリラや麻薬カルテルの盛衰と、政官財の深刻極まる腐敗とそれを支える無処罰主義、9.11以降の米国の中南米戦略など現代コロンビアの実情が詳述される。また、各章末におかれたコラムは、幾度となく現場を踏んだ者にしか描くことのできない迫真のエピソードに満ちている。
複雑な読後感が残る。ガルシア・マルケスが『誘拐』で描いたように、これは決して「裏面史」ではない。果てしない金と暴力の正史なのだ。しかしこの暗黒から素晴らしい文化芸術が生みだされているのもまた真実。著者はいう、コロンビアという国への正しい理解のために敢えて暗部を正視しなければならない、と。なるほど単なる暴露趣味ではない、彼の国への愛情が本書の通奏低音となっているのだ。
唐突だが、垣根涼介『ワイルド・ソウル』の読者にぜひ手にとって欲しいところだ。なぜなら本書は、ゲリラ・麻薬・暴力という漠然としたわれわれのステロタイプに、具体的事実をつぎつぎと差しだし矯正をせまる力を備えているのだから。
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