まず、厚さに圧倒されましたが、読み通して、これだけの長さが必要だったことが
納得できました。2千人の在校生のうち、数百人が乱射事件の高校に閉じこめられていて、
二人の犯人の動きも複雑で、事件の描写(乱射の時間は数十分だったようですが)だけでも、多数のページを要します。
かえって、文体は簡潔であり、丁寧でもあります。二人の犯罪少年の事件までの経過、
被害者たちへの事件の影響だけでなく、その家族たちの様々な思いが、事件後数年に至るまで、緻密に描かれています。
アメリカでの武器の手に入りやすさや、個性や独立心を尊重しすぎる独特な風土が、事件がこのような形で起きた大きな理由のようだと推測しました。
しかし、犯人たちと同じ心性をもった、17,18歳の青年たちはこの国にも多数いるはずであり、それがどのような形で現実化しているものか、と新しい疑問をいだきます。著者は結局、主犯のエリックがサイコパシーであるとの診断をもとにこの事件を解釈していますが、そうした性格傾向をもつ人間は日本にも沢山いることでしょう。
原書が昨年出版されて、早い時期に訳してくれたのはありがたいです。
訳文は大体はこなれているという印象ですが、部分的に、訳が荒いところが目立つのは、こうした本ではしようがないものでしょうか。
と書いて、日本でも若者の無差別殺人が既に何件も起きていることを思い出しました。
違いは銃か刃物かということですね。
自殺願望を抱いている青年が、巻き添え自殺のように、未知の他人を殺傷するというのは、
アメリカも日本も同じです。この本にも、自殺を考えていた高校生が、どのようにして、
殺人行動に導かれるかを克明に描いています。