コレステロールと中性脂肪について、種々のデータ分析や欧米の基準などを根拠にして、現在日本で行われている脂質異常症治療の問題点を指摘したものです。説得力のある記述であり、納得のいく論理展開がなされています。脂質異常症と診断された方は必読すべき本でしょう。次のようなことが書かれています。
1 1995年以降に発表された5つの論文のデータをメタ解析すると、男性では総コレステロールの高いほど死亡率は低くなり、総コレステロールが240以上が一番死亡率が低い。女性では男性ほど総コレステロールと死亡率の関係ははっきりしないが、総コレステロールが160未満では有意に死亡率が高くなる。
2 神奈川県伊勢市の男性8575人、女性1万3751人を平均6.7年追跡し、総コレステロールと総死亡率、原因別死亡率の関係を調べると、男女とも総コレステロールが高くなるにつれて総死亡率は低くなる。
3 日本人でコレステロール低下薬を必要とするのは、人口の0.2%にあたる家族性高脂血症の人、心筋梗塞の既往がある人、男性で糖尿病のような血管に持続する炎症のある人に限られる。ただし血管に持続する炎症があっても、たばこ、トランス脂肪、高血糖、ストレスを避ける生活をすれば、コレステロール低下薬は不要である。
4 米国ではLDLが190mg/dL以上で心筋梗塞を予防するため薬物療法を開始する。生活習慣の改善目標は160mg/dL未満である。日本の特定健診では、120mg/dL以上を保健指導とし、140mg/dL以上を受診勧奨とする。140mg/dL以上で薬物療法を開始し、120mg/dL未満を生活習慣の改善目標としているのである。日本の基準の異常さがわかる。
5 卵、特に黄身はLDLの多い食品の代表だが、卵の摂取量が多い人でもLDLは高くない。肝臓でのLDLの製造が必要に応じて調整されるからである。