ごく若い(というより幼い)頃から、驚くべき作曲の才能で世間に注目されながら、オペラ作曲家としてのウィーンでの大成功の機会には今ひとつ恵まれず、人生の後半をハリウッドの映画音楽作曲家として過ごしたコルンゴルト(英語読みではコーンゴウルド)の代表作といえるオペラが、この『死の都』です。個々の歌のメロディーの美しさなどよりも、むしろ作品全体の構成美と、管弦楽の効果的使用による情景描写・心理描写により多くの魅力があるといえる作品の性質は、いかにもドイツオペラ的な作風といえます。その反面、この作品の音響世界は、ワーグナーともR.シュトラウスとも、ましてや十二音楽派ともまったく異なる、実に独特なロマンティックで甘美なものです。とりわけ特徴的といえるのは多種多様な打楽器の使用法で、あえて類型的に言うならば、モーツァルトが木管楽器で、そしてワーグナーが金管楽器で主としておこなった効果的情景描写・心理描写を、コルンゴルトは主に打楽器を使っておこなったのだと表現できるかもしれません。ともかく、この作曲家の作品を聴いたことのない方は、ぜひこの作品を一度聴いてみてください、これまで知らなかった、もうひとつの近代ドイツオペラの魅力的な世界が、オペラファンの皆さんの心を捕らえて離さないこと請け合いです。このディスクで楽しめる演出は、このオペラや原作にあたる小説の陰鬱でかつ官能的な雰囲気をよくあらわしている名上演といってよいものです。