新井氏の開設まもないブログ「コリアン・ザ・サード」に私が初めてコメントをつけて
みたのは2005年1月のことであった。都に勤務する在日女性が管理職登用試験の受験
資格を求めての最高裁で、原告敗訴という判決にネットが祭りになっていた時である。
記者会見の際に在日女性は品位を欠いた捨て台詞を吐き、それに嫌悪感を抱いた者が
数多くネットに書き込みをしていて、私も含めて皆が在日という存在に胡散臭さを
感じていた時に初めて新井氏のブログに遭遇したのだ。まるで"人間"のような在日が
そこにいるという事実に正直とまどいを覚えた。それだけ在日像のステレオタイプが
私の中に強固に出来上がっていたのだろう。例えとして不適当かも知れないが、
某英会話教室のCMに登場した「関西弁を喋る宇宙人」に出会った感覚とでも言おうか(笑
本書はそのブログの書籍化だが、その後も継続的に問題提起を続けていく中で、様々な
論争があり、新井氏自身も自らについて思索を深めていった過程が窺える。彼が帰化を
決意し、朝鮮系日本人になるまでのいきさつも詳しく触れられている。
彼のブログが大変な人気を集めたのは、日本人は実は在日と真摯に語り合って見たかった
からなのだ。だが日本人にとっての在日とは、日本に敵意を燃やして鼻息を荒くしている
ような人々と久しく認識されていた。しかしすべての在日がそうではなく、素朴に日本を
愛し、イデオロギーとは無縁な人々の方が多数なのだという、考えてみれば当然の事実を
知らしめてくれた点において、新井氏の登場の意義は少なからず大きいと思うのである。