真山仁が初めて挑んだ政治小説ということで期待して読んだが、読後感は余りよくなかった。
舞台は震災後3年が経過した日本。震災による打撃により経済が停滞し、自信を失った日本を立て直すべく登場したカリスマ的な魅力と先見性を有する宮藤総理は、強力な指導力を発揮して日本を引っ張る。但し本書の主人公は宮藤総理ではなく、宮藤に仕える若手の政治学者の白石望だ。
理想に燃えた政治家であった宮藤が次第に回りの意見に耳を傾けず独裁的な傾向を強めていく姿が、白石の目を通して描かれるが、本書のテーマが独裁者批判なのかというとそれだけではない。国益のために少数の国民の生命を犠牲にしてよいのか、腐敗した途上国と付き合うに際し賄賂を贈ることは許されないのか、といった重い命題も提示されている。
著者のスタンスは、日本人の死者が出るとすぐその責任を追求したがるマスコミに対しては批判的であるが、かといってこれらを許しているわけではない。正論のみで国益を守ることができればそれに越したことはないわけだが、それが叶わない時にどのような対応を取るべきなのか。第三者的な立場で宮藤総理を批判するのは簡単だと思うが、それは何の責任も負っていないからできることだ。仮に自分がそのような立場であったら決断は簡単ではなかったと思う。
本書でもその答えは出していないが、宮藤を悪者にしてしまったまとめ方はやや安易。結局は正論のみを掲げる従来の日本のマスコミ的な論調の域を出ていないのが残念だった。