私にとってこの映画の印象は『1980頃の米国のポートレート』といったところだ。(行った事ないけど)
そのポートレートには、ベトナムや70年代の停滞やスリーマイル島を経た当時の米国社会の批判も含まれるように感じる。
そして同時に、そういった矛盾を内包しつつも米国のエネルギッシュな姿を存分に映し出してもいる。
決して文明批判だけのフィルムとは思えない。米国が素晴らしい国かどうか私には判断できない、が凄い国であることは再確認できるように感じた。
日本は米国とは違う。文化的にも風土的にも。
それでも、重なる部分もすくなくない。この映画の批判的な部分は他人事ではないことも確かだ。(とくに3.11を経た今、消費文明の有り様を問い直す部分があるはず)
そんな風にみているとこれは政治的な映画ともいえる。映像だけを延々とみせて最後にタイトル【コヤニスカッツィ】の意味を語るところなど、かなりストレートな表現といえる。
だが、
政治的な映画といってもこの映画の【主役】は美しく凝った映像とミニマムミュージックだ。
それは、まったく隙のない仕上がりで、その完璧さはこの映画を‘神の視線’と感じさせるほど。
通常の意味での映画的娯楽性(ストーリーや人物を追うとか)はない。それを期待するとまったくつまらない。通常の映画鑑賞とは違う見方が必要だ。これは体験する(感じる)フィルムといえる。
おそらく視聴する環境によって印象が大きく変わるだろう。家庭では完全な体験に達しないだろうと思うが、こういった映画表現があること(そして作品として、商品として、成立していること)を観る、という価値もこのDVDにはありそうだ。