「ボランテタリー経済の誕生」「コミュニティ・ソリューション」「コミュニティ・スクール」「学校評価」などに続いて、刊行された。第1章において、コミュニティ科学の定義とコミュニティ・ソリューションの考え方に基づいた社会問題解決のための理論と方法論が基本シナリオとして提示されている。第1章後半においては、コミュニティ科学が、ゲーム理論、ソーシャル・キャピタル論、制度論を援用した理論的な裏付けが行われている。コミュニティ科学の基本シナリオは、パート1〜3に分かれている。パート1は、私たちが直面する社会・経済問題は、これまで政府か市場によって解決するという二者択一であったが、当事者の集まりであるコミュニティによる問題解決を新しい選択肢として提供している。このコミュニティによる問題解決を、コミュニティ・ソリューションといい、社会コストの低減が可能な第3の選択肢としている。パート2、パート3では、ソーシャル・キャピタル論、社会イノベーションという視点から、ソーシャル・キャピタルの高いコミュニティにおいて、社会イノベーションが契機となることで、社会問題の解決において高い生産性がみられることを説明している。この生産性を社会生産性といい、コミュニティの自発的協力や相互信頼がもたらす満足度を示す新たな指標となっている。
第2章において、コミュニティの捉え方とソーシャル・キャピタル概念の検討が行われている。「ソーシャル・キャピタル概念の検討」から「ソーシャル・キャピタルのインタラクティブな醸成へ」の節までは、興味深く示唆に富んでいると思う。
第3章以降、コミュニティ科学のモデルとツールの検討を行っている。具体的に複合型コミュニティモデルとコミュニティ社会基盤について、保育、学校教育に加えてスポーツコミュニティが話題として挙げられ遠隔医療、教育評価、コミュニティの再生など具体的な事例から分かりやすく説明されている。
「おわりに」(対談形式)に至るまで、内容はパットナムによって提示されたソーシャル・キャピタルを理解するうえで最適である。ソーシャル・キャピタルは、マジックワードとして使われ便利だが、曖昧で使うことにためらいもある。また、負の効果も指摘できる。しかし、ソーシャル・キャピタルの定義と適応範囲に関して丁寧な説明が行われ、とても分かりやすく読むことができた。ソーシャル・キャピタルについて、読後、雲を掴むような感じはなかった。この本は、社会科学の研究を統合する一里塚となると思う。