本書は、4巻からなるシリーズ『持続可能な福祉社会へ―公共性の視座から』の第1巻として、「コミュニティ」というテーマを取り上げ、それを現在の日本社会の状況に関連づけながら幅広い観点から吟味するとともに、今後の展望を探るものである―本書「序論」から
当書の性格は、まさに編著者である広井良典氏の上記の言葉で言い尽くされている。ここで「持続可能な福祉社会」とは、広井氏によれば「個人の生活保障や分配の公正ないし平等が実現されつつ、それが環境とも調和しながら長期にわたって存続できるような社会」と定義される。この〈社会像〉を描くに当たって、コアとなる概念が「コミュニティ(=共)」であり、広井氏の区分に従えば「政府(=公)」と「市場(=私)」の中間に位置するものだ。シリーズ第1巻目では、コミュニタリアニズムを含む「コミュニティ」に関する様々な考え方について、千葉大学の俊英たちを中心に、
菊池理夫氏なども加わって論じている。
ところで、この「コミュニティ」という響きに、私は先ず、BS日テレで放映されている「
小さな村の物語 イタリア」という番組を思い起こしてしまう。ゆったりとした時間の流れの中で、村の歴史や自然、伝統や家族を愛する心温かき人々の生…「コミュニティ」の原初がそこにはある。そして何より、「コミュニティ」とは“人と人とのつながり”が基底にあるわけだが、このことは「社会脳」を連想させよう。脳科学者の
藤井直敬氏によれば、私たちの脳の一部には「他者とポジティブな関係性をもちたいという、関係性欲求機能がある」(
つながる脳)からだ。この機能が正常に働く限り、「コミュニティ」の再生は可能かもしれない。