現代という時代に「適応」している、そのことがそもそも「異常」である。
本書を通して繰り返し語られる上記のような指摘は、多数派に属していると「思い込む」ことで安心している人々の生活を根底から揺るがすものだ。
10年前に出版された本とは思えない、リアルで生々しいメッセージに背筋が冷たくなる。
当時宮崎某、女子高生コンクリ詰め事件を根拠に語られたこの現代病は、むしろその病状を悪化拡大させているのではあるまいか。
母親を毒殺しかけた女子高生、友達を刺殺した小学生、幼馴染をメッタ刺しにした少年…
閉じた世界で、麻痺していく対人感覚。短絡的になる思考。
人間が人間を、人間だと思えなくなる世界。
10年前に著者がシミュレートした世界は、今や現実の姿になりつつある。
「やおい」や「拒食症」にまつわるジェンダー論としても面白いのだが、その他にオタクや凶悪犯罪等、全てにつながるものとしての「コミュニケーション不全症候群」という仮想現代病には説得力がある。
何よりも「現代」に慣れきってしまっている人達に読んで欲しい。そして改めて気付いて欲しい。
自分達が今生きる世界は、随分と不自然で歪な姿をしているのだと。