「競争社会」と一口に言っても色々な形があると思うが、この本の中で描かれているそれはスポーツというより、ルール無用の殺し合いに近い。強い者が弱いものを食い物にし、弱者は転落し、再起のきっかけもつかめない。
医療や保険のような国家が責任を持たねばならない分野にまで民営化の波がおよび、それらをもっとも必要としている弱者が効率化と利潤の最大化の妨げとして排除されていく。国家という「リヴァイアサン」が消滅し、「万人の万人に対する闘争」が蔓延する地獄のような社会であるという印象を持った。
作中の日米の医療費比較を見れば、日本の医療がどれだけアメリカより恵まれているか分かる。むろん日本には日本の問題がある。でも、ルールそのものがなくなってしまったかに見えるアメリカに比べれば遥かに進んでいると言えよう。
「日本は遅れている。アメリカは進んでいる」というステロタイプな認識は危険だと思う。無批判なアメリカ追随は、かの国と共倒れになる可能性大だ。
ハードな問題だが、生き生きとした絵で分かりやすく描かれている。いい本に出会えたと思う。原作である新書版も読んでみたい。