小さなデザイン会社で働く若いOLが、社長と不倫をしており、社長の妻も専務、みたいな
家族企業で…みたいな地味な設定で描かれるこの小説の中の不倫は「本当に好きなんだな」と、
恋愛としての圧倒的な説得力が感じられ、それゆえに、素直に「切ないな」と思えた。
奥さんに負けないわ!とテンションが高かったり、いじいじ泣いて待つ女になったり、と
バカみたいにドラマティックじゃないところがとてもリアルに思えた。
また、ヒロインの、恋愛以外の、親とか友人とのつきあい=恋愛もので
割と雑にされがちな人間関係も丁寧に描かれていたので、ひとりの
女性として、とても親しみを感じ、だから彼女の痛い恋愛で一緒に泣きそうに
なった。カッコつけたり派手な比ゆがあったりウルトラC級のどんでん返しが
あるわけじゃなく、ただただ丁寧に一途に人を愛した話。その行方が
気になってページをめくる手が止まることは1度もなかった。私の
指先も「トマラズ」だったのだ。小道具による感情表現とか、すごくきちんと
小説を書こうとして書いた作者の姿勢にも好感が持てる。