米澤氏の著作では、こちらより先に「私に萌える女たち」を読みましたが、こちらのほうが若干読み物としてのおもしろさという点で勝りました(「私に萌える女たち」は、良質な女性雑誌の参考本です)。題名から見ると化粧の話だけのようですが、ファッションの話も半分ぐらいです。
おもしろさ、と引き換えかもしれませんが、少々議論が単純化されすぎているのではないか、という感はあります。みんながみんな一斉にリカちゃんを捨てて自分遊びに走ったり、ファッションによる自己表現に溺れたりしたのではないはずなので、意識的にせよそうでないにせよそれから距離をとるという決断をした人々についても一言あったらよりよい本としてまとまるのではないでしょうか。米澤氏は、あとがきで自身のファション好きを認めていらっしゃいますが、それゆえに研究対象から批評的距離をとる、ということが難しいのかなあと思いました。
そして、米澤氏のおっしゃるとおり、21世紀の今、化粧は二兆円産業であり、さまざまな人が楽しむ趣味です。だからこそ、それを支える個人の情熱は、彼らがただ単に雑誌や美のカリスマたちにだまされている、というだけでは説明がつきません。なので、もう一歩踏み込んで、コスメ、ファッションを通じた「自分遊び」の実践から広がる世界、などの具体的な話も聞かせてもらいたいなあと思いました。
2000円以上の本なので、購入にはそれなりの覚悟が要りますが、コスメ、ファッションという「表面の」自己表現の変換の歴史に興味のある方には必読書です。