内容紹介
黒いミニ・ドレス、ブレードで縁取りをしたジャケット・スーツ、二色コンビのパンプス、マトラッセラインのバッグ。
ココ・シャネルほどフランス的なイメージを強く感じさせるものはほかにない。
〈偉大なマドモワゼル〉のデザインしたファッションは、上品でエレガントなパリの顔となり、
そのエレガンスははるか遠くの国々の国境を通り過ぎていくことになった。
海外に進出してからのシャネルは、フランスを代表するイコン(聖なるシンボル)以上の存在であり、
ファッションの世界的な文化遺産であるからだ。
ココ・シャネルのサクセス・ストーリーは、フランスにおける女性の歴史において特異なケースだ。
フランス中央山地のセヴェンヌ地方で生まれたこの質素な田舎娘が、
ほかに例を見ないほど並外れた出世を成しとげ、
フランスだけでなく世界規模でファッション界の女王となることを誰が想像しただろうか。
信じがたい運命の糸に操られ、この両親のない少女は先を見通す才能の力によって、
世界を支配する正真正銘の大企業のトップに登りつめることになる。
ココの偉大な力は自分の才能を認めさせることを心得ていたからであり、
いくつもの国境を越えて世界じゅうでファッションの権化となる。
とりわけ日本では、完璧さへの恒常的で魅惑的な探求は、
ごく自然に豪華品の世界を通して表現されている。
世界的な高級品を扱う企業のなかで、今日シャネルは最も伝説的な企業であることは間違いない。
シャネルの国際的な輝かしい名声に対して、それ以降の時代は何の影響力も持たないが、
ココが起こした婦人服の革命や、女性たちの生活の実情を把握すべき判断力にはふさわしい名声である。
シャネルが初めて作品を発表したのは、第一次世界大戦の真っただ中である。
その戦争でひとつの世界が崩壊し、その戦争によって婦人服も新たな時代を迎えることを彼女はわかっていたのだ。
ココ・シャネルは根っからの革新的な女性である。
彼女がフランス国外で成功している理由はまさにそこに存する。
シャネルが日本人にこよなく愛されているとしたら、
シャネルのコンセプトがあの有名なシャネル銀座のビルのなかに具現されているからだ。
日本人がこのビルのなかで、シャネル・ブランドの精神も感じ取っているということである。
それはこの伝統と現代性とのハーモニー。
比類のないひとつの現象である。
(日本語版への序文より)
レビュー
日経MJ 10/2夜何を身につけて寝るのかと聞かれて、マリリン・モンローは
「シャネルの5番の香りよ」
と、答えた。
本書はその「シャネル」ブランドを作ったフランスのファッションデザイナー、
ココ・シャネルの一代記だ。
独創的なセンスで実用的なファッションを提案。
すっきりとシンプルで美しい服は、多くの女性に受け入れられた。
ココは言う。
「女性たちの身体(からだ)を自由にしてあげたわ。
盛装した服のなかで、身体は汗をかいていたのよ」
幼くして母を亡くす。
行商人だった父は彼女を孤児院に預けて行方をくらました。
本名はガブリエル・シャネル。
「ココ」はカフェで歌っていた若いころの愛称だ。
複雑な生い立ちの反動からか、猛烈な事業意欲をみせる。
仕事に没頭し、成功し、お金を手にすることは、
自由というこの上ない幸せを獲得するためのものだった。
傲慢(ごうまん)さとプライドのおかげで自分を見失うことがない。
「他人に厳しく、攻撃的で、威圧的で、移り気で、扱いにくい人物」。
従業員からはこう言われた。
幸せな家庭生活には一生縁がなかった。
その墓石には5頭の獅子頭が彫られている。
5は彼女のラッキーナンバー、獅子は星座だ。
往時の欧州ファッション事情もうかがえる1冊である。