数年前、シャネル生誕125年ということで、ココ・シャネルを取り上げた映画や書籍が相次いでいた。
クリエイティブな才能に加え、卓越した精神力や知性をもったシャネルは、今を生きる女性にとっても、特別な存在である。
しかし、この本は、そうした彼女個人の才能や資質ではなく、彼女を取り巻く華麗な人脈に光を当てて、その人脈がもつ意味をわかりやすく説明している。シャネルの人生遍歴が、ネットワークの形成や活用の視点で描かれていて、しかも楽しいイラスト入りである。
もちろん、シャネルはその魅力ゆえに、名だたる貴族や芸術家を惹きつけることができたのだろうが、それでも、なぜ孤児院で育った若い彼女が、ブルジョア階級のバルサンやイギリス人の実業家、カペルと知り合うことができたのか、また、そうした彼らとの人間関係(恋愛関係)をステップに、上流階級社会の中でいかに人脈を広げていったのか、さらにそうした人脈が、彼女のファッションデザイナーとしての成功にどう寄与したのか、といった漠然とした疑問があった。そうした疑問に明快に答えてくれているのがこの本だ。
とりわけ興味深かったのは、不遇の時代を経て、復活に至るプロセスである。
また、個々の人間関係をその実利性と精神性の軸で俯瞰するというアイデアも秀逸で、シャネルのネットワークは、そのバランスの良さに驚くばかりだ。翻って、自分はどうだろうと自問するのもおもしろい。
どんな人でも、だれかしらと必ずつながっている。後になって、あの人の存在が自分にとってはこういう意味があったんだと振り返ることは多いだろう。いい意味でも悪い意味でも私たちは、人とのつながりの中で、影響を及ぼし合いながら生きている。「戦略的に」ネットワークを築くという生き方そのものに批判的な人にとっても、楽しめる本だ。