本書はゲーデルの不完全性定理が登場するまでのヒルベルト計画に焦点を絞って解説されています。
筆者らは10年余りに渡りヒルベルトの研究を再考し、その成果が本書になっています。
ヒルベルトは生涯 自身の研究をノートに記したようですが(本書ではヒルベルトノートと呼んでいる)、
このヒルベルトノート等を基にし、ヒルベルトがいつ頃 可解性思想を着想し始めたのか、そしてヒルベルト計画の実行に至り、不完全性定理の登場をもって否定的に終止符を打たれたのか、実に見事に記述されています。
通常、ヒルベルトの数学基礎論への関与は1901年のパリ講演と直後の幾何学研究から始まるとされているようです。
しかし本書ではその着想がヒルベルトのもっと若いときから始まることを示す為、まだ無名だった頃のヒルベルトを振り返り、不変式に関するゴルダン問題を無限的にも有限的にも解決してしまったことと可解性の思想をリンクさせています。またこの中で、筆者らがヒルベルトの可解性をゴールドバッハ問題に帰着させている点が面白いです。
いわゆる「ヒルベルト23の問題」はヒルベルトが国際数学者会議で発表した訳ではないこと、幾何学基礎論でよく言われる「“点”を“コップ”に置き換える」という言葉をヒルベルトがどんないきさつで発言したかなど、ちょっとした意外な点でも大変参考になりました。
ヒルベルトについてこれほど研究されている本は、他にないのではないでしょうか。是非一度手にとって読んでみることをお勧めします。
また、本書の題名と内容にはギャップがありますので(理由は前書き、後書きに十分記されています)、この点は事前に理解して読んだほうが読みやすいでしょう。