タキトゥスの名著『ゲルマーニア』です。ちょっと訳が古い感じもしますが、本自体は厚くないし、内容も面白いので読むのにさほど苦労はしないと思います。
念のために解説すると、古代のゲルマンを記した史料としては、カエサルの『ガリア戦記』と並ぶ有名な著作です。タキトゥスは紀元後100年前後にローマ帝国で活躍した歴史家。当時、爛熟の果てに頽廃の刻を迎えていたローマ帝国の視点から、いまだ荒削りで未熟ではあるが活力のあるゲルマン人を描いたのが本書です。
であるから、ゲルマン人に対するタキトゥスの羨望が混入していることが当然予測されるのですが、とりたてて差し引いて読み解かねばならない部分は特に無いと思います。ローマ人の著者が知り得る範囲で可能な限り、客観的に詳細に当時のゲルマンの様子が生き生きと描かれていると思います。
細かい部分で興味深かったのが、バルト海沿岸アエスティイー族の地で琥珀が採取される、という記述です。アエスティイーとは現在のエストニアのことです。
琥珀は中世の商業ルネサンスの時期においても、バルト海商業圏における主な商品の一つでしたし、現在においても琥珀といえばバルト海岸産が有名なようです。
ちなみに、本書の中で明に暗に記されている、熟しすぎたローマへの警句は、時代と場所を置換しても通用するように感じるのは私だけでしょうか?