2004年のクリスマスシーズンにアメリカで放送され、その直後、原作者ル=グウィンが烈火のごとき怒りを表明、アメリカでは肯定的な感想・評価を述べていたのは「原作を読んだことがない」という人がほとんどでした。
そのお祭りのような様子に感化されてついアメリカ盤のDVDが出たときに見てしまったのですが、原作の持つ哲学的な深さ、五感に迫り来るような重厚さ、ル=グウィンが原作に込めたネイティブ・アメリカンへの思いや、社会的弱者と呼ばれる人への差別に対する批判精神などは、みじんも感じられませんでした。ル=グウィンが怒ったのはまさにそこで、単なる「純然たる悪」と「純然たる善」の戦い、というお気楽安直ファンタジーにしてしまったことへの怒りでした。
1巻と2巻が原案ですが、1巻のゲドの読者が息詰まるような、命がけの成長を共に感じることもなく、2巻のテナーの自由になることへの憧れと恐れ、初めて人を愛するときのあのドキドキ感などもいっさい共有できません。
しかし、まあ画像はきれいだし音楽もそれっぽいし、表面的に「小ぎれい」な作品で全然オッケー、という方には、日本のアニメのできの悪いものよりは少しはいいかもしれないね、とオススメしておきます。
原作に対する愛情も敬意も感じられない、という意味ではどっこいのようですから。