小学生のころ夢中になって読んだゲド戦記,少しだけ大人になってその深さに感動したゲド.そして沈黙をやぶったこの「最後の書」.自分の成長と合わせて変化する視点以上に,この作品でゲド戦記の持つ意味は激変する.魔法使いとしての力を失い,本当の意味で自分を見つけることが出来たゲドの人生再発見の記録とも言えるのではないか.それには,ル・グインのフェミニストとしての一面の影響が色濃く,時代の流れを感じさせる.高校生だった自分がこの本の初版を手にとったとき,正直,拒絶反応をみせた.面白くない,図書館の司書のお姉さんに「青い」と言われた.今になって青かったのが分かる.これは児童書ではない,これから自立しようとする大人のための本である.それは年齢など問わない,他人を理!解しようとするその行為を始める時が自立なのだから.