前途を期待されながら留学先のドイツで帰国直前に病をえ、若くして結核で亡くなった著者の祖父がゲッティンゲンやライプチヒで丹念にしたためた家族宛の日記には、第一次世界大戦前のドイツの風物誌や下宿先の様子、同時にゲッティンゲンに留学した寺田寅彦ら留学生仲間との楽しい交友が描かれていた。この日記を軸にしながら、それまで知られなかった寅彦のゲッティンゲンでの生活や著者と寅彦の次女弥生さんとの親密な交流、それぞれの留学生仲間の人生の光と影があざやかに描かれている。歴史的事実もしっかりとふまえられ、漱石や森田草平らの作家がときにきら星のように現れて、志半ばで倒れた祖父への愛情あふれる鎮魂歌になっている。さながら大河小説を読むような読後感を与えてくれる。