「ジャズ・サンバ」の成功に気をよくしたヴァーヴが、柳の下のもう一匹のドジョウを見事に射止めたアルバム。「ジャズ・サンバ」同様グラミーまで獲得してしまった。
タイトルに並んでいるとおり、このアルバムはゲッツのアルバムとして聴くか、ジョアンのボサノバとして聴くかで評価が分かれる。
ゲッツはクール一派だと思われているが、ルースト・セッションなどに聴かれる如く、内実はホットなプレーヤーである。
一方往年のジョアンの名盤や、数年前の彼のコンサートに接した人ならば、彼が自分の音楽をどのようにとらえているか、どんなコンセプトの持ち主かは容易にわかると思う。本作を録音時に、うるさいテナーだと言ってゲッツを辟易させたジョアンのエピソードはよく知られているが、水と油はどんなにかき回しても、時間がたてば二つに分かれてしまうものなのだ。
しかし、水と油で出来たドレッシングでも、サラダの上にかけて食べればおいしさを引き立てる。このおいしい瞬間をパックしたのがこの「ゲッツ/ジルベルト」なのだ。
どうしてもアンニュイなジョアンのボッサが聴きたければ、彼のオリジナル作品を聴くより他はない。ゲッツについても、いくらベストセラーだろうと、これが彼の代表作かと問われれば、否、と答えるしかない。
それでも私は、この作品でしか聴くことの出来ない美しい音楽があると信じて疑わない。