本書は、月々のケータイ料金を半額にするテクニックを教えるためのマニュアル書ではない。しかし、オバマ大統領ではないが、ケータイ業界やビジネスの仕組みが「Change」することで、日本のケータイ料金はもっと下がる余地が残されていることを、読了後にひしひしと感じることができた。
情報サイトはもちろん、業界紙等では見ることのできない突っ込んだ取材と考察により、現状の携帯電話ビジネスが置かれる状況と今後の展望が語られている。特に、最近、朝日新聞の1面トップ記事で取り上げられた、事業者間の高止まりした接続料について斬り込んでいる点は大いに評価したい。他メディアが書けなかった業界の闇に包まれた部分をなんとかして暴こうというジャーナリストとしての気骨を感じた。
この著者は、かなり以前より通信業界の情報を各種メディアで発信しているが、常に、イノベーターや挑戦者を応援する姿勢にブレがないと思う。その姿勢が本書にもしっかりと注入されている。大手事業者には厳しい目を向け、その一方で、日本通信やふるさとケータイを推す論調が目立つのもそのためであろう。
ケータイビジネスのオープン化論者ではあるが、その一方で垂直統合によるメリットもしっかりと分析、記述されており、オープン論者にありがちな、一方的な垂直統合否定になっていないバランス感覚も読んでいて説得力のある部分だと思う。
大臣裁定にまで至った日本通信とドコモの"けんか"の内容については相当詳しく書かれているが、著者の推測も含まれており、これが何処まで本当かどうかはわからない。ただ、業界紙や新聞で追い切れなかった出来事をしっかりとした取材で赤裸々にしている点はこの筆者の取材力に負うところが大きいだろう。ドラマチックな展開の最後に出てくる、総務省官僚の「作文しました」というコメントに、カタルシスを感じた。
ただ、他の人もレビューで書いているが、オープン推進派の取材と比較してドコモなど通信キャリア抵抗勢力への切り込んだ取材があればもっと充実した内容になっていたと思う。そういった意味では、両論併記の脇が甘い論調になっているのは残念だ。というわけで、星4つにした。