本書は、iモードしかけ人が目指すケータイの近未来戦略と、遠い未来の予言が両方収められています。
そうそうたるクリエータを率いて立ち上げる新サービスとは、いったい何か。興味津々で読みはじめましたが、本書の完成に3年もかけているうちに、実は、新サービスはもうスタートしてしまいました。
答は、おサイフケータイです。
このおサイフケータイを普及させるための様々な工夫が本書で明かされていますが、ここは割愛。
もう一つの、ケータイの遠い未来の予言は、興味深いものでした。
意外にも、著者はケータイが人間の基本的なライフスタイルを変えるとは考えておらず、端末ハードはともかく、携帯電話機の根本機能自体はそう変わらない、と見ています。
私がとても興味深く感じたのは、夏野氏が読者を納得させる方法です。
何しろ、iモードが海のものとも山のものとも分からない時期に、あのお堅い銀行関係者を納得させ、iモードスタート時のケータイバンキングの協力を取り付けた夏野氏です。その後、銀行が参加するなら……、とケータイ用サイトを開設してくれる企業が続出したのが、iモード成功の一因になりました。
正確には覚えていませんが、『iモード事件』(松永真理著)の中に、夏野氏と一緒に銀行関係者と打ち合わせた若手社員が、
「夏野さんが話すると、催眠術にかかったように相手がウンという」
と報告する場面がありました。
本書も論旨に無駄がないだけでなく、ある時は数字を用い、ある時は感情に訴える内容で、読んでいると著者といっしょに通信業界の閉鎖性に憤慨している自分に気づいたりしました。
あれ? 知らないうちに、夏野さんガンバレって応援してるなあ。
私はウィルコム利用者で、カミさんはauなんだけどなあ。
説得されていると気づく前に納得していた。
本書を読んで、そんな体験をお楽しみください。