ジョン・ケージ(1912〜1992)は、生涯にわたって次々と新しい音楽を生み出していった。プリペアド・ピアノは1935年にケージとカウエルが考案したもので、ピアノの弦の部分に金属・木・ゴム・プラスチックなどを挟み込んで、通常とは違う音が出るように「プリペア(準備)」したものである。1台のピアノから様々な打楽器の音を出すという新しい試みであると同時に、ピアノの打楽器的性格を最も強く反映した奏法と考えることもできるだろう。
この「ソナタとインターリュード」は、1946〜1948年にかけて作曲されたもので、インド哲学の「不安の感情」を表現したものであるという。またこの「不安の感情」は様々な感情と安定への指向を含むというが、プリペアド・ピアノの音そのものが、通常と違う不安定な音と加工されていない安定した音の両方を響かせるという点で、この「不安の感情」に結びついてるとも言えるだろう。鍵盤を叩いた時にいつもと違う音が出るというのも、奏者と聴衆の不安をあおる。
現代音楽の演奏に良し悪しの評価を下すのは難しいが、この高橋悠治による録音は発売当初から名演との呼び声が高い。プリペアド・ピアノの場合は楽譜にプリペアの方法も書いてあるが、使うものの材質や場所によって音が大きく異なるため、そのあたりも評価の対象になっているのだろう。この録音では高橋自身がプリペアを行っており、その点でも細部に亘るこだわりを感じ取ることができる。元々録音が少ないこともあり、貴重な音源であることは間違いない。