クラシック・ギターでジャズ史上の傑作ケルン・コンサートに挑む、あっと驚く作品。一夜で消えたかもしれない即興演奏が、CD等で多くに人に感銘を与え、楽譜も作られ、違う楽器でトリビュートが捧げられるのだから、ケルンでのキース・ジャレットの奇跡の「演奏」は30年の歳月を経てバッハの器楽「曲」のように楽器を選ばない不朽の古典になったのである。マイ・ソングのギター演奏は既にあったが、大作ケルン・コンサートのトリビュートは全く予想外だったので衝撃的。そして、原演奏の精神的な高みを見事に再現したギターの音色の美・響きの奥深さに感嘆する。
ところで、本作はケルンの華、パート1の完全再現ではない。上の楽曲詳細の1(3分)でその冒頭、7(約3分40秒)で最後をカバーするが、1は独自のパッセージを加えた終わり方が若干中途半端。7は良い。2はパート2b、3はパート2c、4〜6はパート2aから選ばれ、約27分半の1〜7でケルン・コンサートの要所を配置し直した組曲としている。聞きとばしがちなパート2に光を当ててくれるのは有難い。数箇所に挿入された女性ヴォイスとボディ・パーカッションはでしゃばり過ぎずに異質なテイストを加えることに成功している。なお、本作はケルン・コンサートへの挑戦に注目しがちだが、ビル・エヴァンスの8、9、マイルスの10も完コピに終わらない快演。原題が「ワン・フォー・ヘレン」なのだから、これらの曲にも耳を傾けて欲しい。私は原曲より約2分長い曲8の演奏が気に入った。
このように、本作はクラシック・ギターの新たな地平を開き、ケルン・コンサートがキースだけの物ではないことを示した秀作だが、やはりケルンはパート1を通して聴きたい。将来どんな楽器でもいいからパート1全部の再現が実現することを期待し、その可能性を示した本作を高く評価したい。