ケプラー予想とは、あまり知られていないが、「球の最密充填は面心立方である」というもの。これは、物理・化学者には証明されていなくても当たり前だと思われていたことであるが、証明は困難であった。解くのは難しいが、問題を理解するのは簡単だということで、「フェルマーの予想」に比較されたが、結局計算機の助けを多く借りたため、あまり話題にならなかった(四色問題のころは、計算機で解くことが逆に話題となったが、最近では珍しくない)。従って、数学的な面白みが多くは期待できず、本の内容もそれにたがわず盛り上がりに欠ける。
ただ、盛り上がりに欠けるのは、それだけではなく、著者が数学者のエピソードにのみ終始し、数学的な内容を掘り下げていないことも原因と思われる。例えば、規則格子においてはガウスが証明したことは有名であるが、逸話のみにページを割いていて数学的な記述は少ない。また、肝心の計算機による証明も、それに対する他の数学者の反応は多く書かれているが、証明の内容に関する記述は乏しい。他の充填問題についても、例えば[4,6,6]準正多面体なども、結晶化学や工学には多く見られるものであるのにそのような例は書かれていない。
もちろん一般向けの本であるのでそういう話は書きにくいだろうが、それらをわかりやすく一般向けに書けばより魅力的な本になったろうにと残念である。