ピアノ・トリオの傑作は数多くあるが、このアルバムは50年代に録音されたジャズ・ピアノの白眉といっていい内容である。ケニー・ドリューはチャーリー・パーカーとも共演したことがあるビ・バップ時代から活躍したピアニストだが、若い人にとっては70年代以降ステイープル・チェイス・レーベルの「ダーク・ビューティー」などに代表されるヨーロッパでの活動がおなじみであろう。その流麗でテクニック、リズム、センスとも申し分の無い完成されたピアニストという印象で、デクスター・ゴードンやジャッキー・マクリーンなどとも共演し、独自の感性美あふれるプレイを展開している。しかし、このトリオ・アルバムは後のドリューの功績に決して引けをとらない黒人特有のブルースフィーリングに支えられた粘りとエモーション、さらに力強いタッチなどがすでに聴かれ、50年代最高のピアノ・トリオの演奏を実現させている。「降っても、晴れても」ではビル・エヴァンスとの比較、「ルビー・マイディア」では後のマッコイ・タイナーとの比較などをしても興味深い。ハンク・ジョーンズ、トミー・フラナガン、ソニー・クラーク、ウイントン・ケリー、バリー・ハリスなど優れたピアニストを輩出した50年代だが、ケニー・ドリューの50年代もこれ1枚で当時の最右翼であったことを実証している。