これまでつぶさに読んできた中山可穂の作品を片っ端から否定してしまう部分を感じるラストに呆然としてしまいました。
罪に対する罰を読者にゆだねるラストを敢えて描く作家はいますが、今回のケッヘルで作家がどの程度「贖罪」について意識して書いたのかという点がどうにも気になります。複数の人間を恨みから殺したことについて、なんの法的責任も追及されない、裁判さえ受けないという状況は果たして罪を犯した当人にとって幸せなことなのかどうか。
何より、その犯罪者をかくまおうという主人公の重大な覚悟が、アンナの罪悪感ゆえの苦しみとその周辺を掘り下げて描かないことでただの浅はかさに落ちてしまうという過ちをおかしているように思えてなりません。主人公が恋人を、彼女に対する愛ゆえに救える道があるとしたら、そこにしかないとさえ思える重要なポイントなのに。。
また、連載ゆえのあせりなのか、設定の矛盾が後半随所に見られることが全体の完成度を低くしてしまっています。
中山可穂は私にとってとても重要な位置を占める作家に違いありませんが、丁寧に一作一作を書き下ろしてほしい。ミステリーだろうがサスペンスだろうが恋愛小説だろうが、ジャンルはかまいません。要を外さない勢いをもった中山可穂に期待します。