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I「現代経済思想としてのケインズ」,II「ケインズの生涯」(水田),III「ケインズの理論」,IV「ケインズと現代」という四部構成は,単行本時『人類の知的遺産』シリーズ編集局から課されたものだろうが(同シリーズ『ニーチェ』もそうだ),どれから読んでもよいほど各章が完結している。4頁にわたる索引まであるのは,わたしのような経済学音痴には嬉しい。これで1,000円。
「supplementary cost」「user cost」をめぐる適訳の提示にとどまらず,全集邦訳『一般理論』で訳された「不効用」より「負効用」が適切だと訴えているが,わたしもそう思う。“翻訳”を超えた“解釈”をめぐっても,全集訳者による説明を「誤りである」とするなど(151頁),わたしのような鈍(なまく)ら読者にさえ,理論解釈をめぐる緊迫感が伝わってくる。
モーリス・ドッブなどという真っ赤っかなマルキストが,じつはケインズの薫陶をうけていたという事実は衝撃的であったが,これを知ったのは本書を通じてではなかったかとおもう(本書表紙カバーが赤地なのは無関係だろう)。この副読本を読んで初めて『一般理論』に一歩近づけたという思いがあったが,その後の歩みがないのはわたしが悪い。しかし,三流大卒の一介のサラリーマンでさえその一歩をたった1,000円で踏み出せたとすれば,「『一般理論』を読むのはちょっと・・・」と躊躇している人にとって,この本は“買い”だ。
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