本作は、2005年発表のポール・マッカートニーのアルバム『Chaos and Creation in the Backyard』の再発盤です。
ポールのCDを聴くと、いつも最初は、少しつまらなく感じます。
毒がないというか、今いち変化に欠け、もっと行くところまで行ってくれと、なんだか歯がゆい気持ちに襲われるのです(あり余る才能を持ちながら、まだ余力を残している、出し切ってない、と感じるのです)。
でも結局最後はいつも「どうもすみませんでした」で終わります。何度も聴くと、また違って聴こえるのです。
この作品は、中でも一層その傾向が強いようで、皆が言います、聴けば聴くほど味がでると。僕もまたそんな感じを味わいました。
あまり言われないことですが、ポールはイギリス音楽(クラシック、民謡等)の、ポップス界における、正統な後継者なんだと思います。
ポップな受け入れやすい感性の影にかくれて、歌詞や楽器、雰囲気といった随所に、イギリス的なもの、イギリスの伝統的な「何か」を感じさせます。
この作品は全体として暗めですが、そこにはイギリスの曇り空や、夕暮れ時の田園地帯が目に浮かぶような、そんな趣があります。
あと、一つ余談ながら、この際言わして頂きたいことがあります。
ポールという人物なり、音楽なりを語るさいに、一々ビートルズを持ち出すのは、ファンとして止めて頂きたい、ということです。
音楽がビートルズっぽいかどうかでその作品の価値を判断したり、あれはこれに似ている、これはあれと、常に先入観をもって音楽を聴くのは、アーティストに対して失礼だと思うからです。
ビートルズのポールを聴きたければビートルズを聴けばいい、といつも思います。
変わり続ける、ということをファンが否定したら、ポールも伸び伸びと活動できないんじゃないか、正当な評価もなされないんじゃないか、といつも思います。
付記:このCDはSHM-CD仕様となっており、音質の向上とより生々しいサウンドを楽しむことができます。