大著である。学究の書である。今後の「ケア」「福祉社会」を論じる際の重要な基本図書である。
このレビューは、その書を通読してのものではない。どういう書かを探ってのものである。早く、一冊でも多く人々の手元に届いてほしいからである。
「あとがき」の冒頭に「本書は過去10年余にわたる介護保険下のケアの理論的・経験的研究の成果である」と書いてある。研究は机上よりも現場調査を基としている。調査は1999年から2007年までの足かけ八年にわたっているという。1997年の介護保険法成立、2000年の同法制度実施に絡んでの調査研究であり、制度実施10年に合わせての上梓であると言えよう。また、東大大学院教授退官、新生への記念出版でもある。
著者と福祉社会学の副田義也は、本書のゲラが出た上で2011年1月7日に長時間の対談を行い、『atプラス 07』(太田出版、2011年2月)に掲載した。26頁のその対談記録は、本書のよき解説であると同時に、その一部が本書に活用されて厚みを増しているようだ。
さらに本書の序とあとがきは、3月11日以降に執筆され、日本のケアの現状と日本社会の将来への見通しを記して本書を画期的なものとしている。
「初版への序文」という言葉を頭に置いた序は、「ケア―共助の思想と実践」と題されている。22頁に及ぶその序は、大震災で〈行政も警察も機能しなくなったとき、日本ではホッブズのいう「万人の万人に対する闘争」、弱肉強食の野蛮状態は現象しなかった〉とし、その理由は国民性や東北人の気質、血縁・地縁に求めず、「民主主義と市民社会の成熟の証しだと思えばよい」と指摘して理由を記している。つまりそこには「共助の思想と実践」が存在していたのだというのである。故に、「わたしたちが到達した社会はこのようなものだ。/希望を持ってよい。」と締めている。
なお、この「共助の思想と実践」というフレーズの「共助」は、「ケア」の同意語かと考えられる。最終章(第18章)の最終節には「ケアの思想と実践とは、超高齢社会を生きるすべての人々にとって必須の課題なのである」とある。私たちはその要に「共助」があると解してこれからの日本における福祉社会の構築に努めたい。
評者は78歳、まだ働いている連れ合いと暮らす昼間独居老人である。「良いケア」とは「個別ケア」だという本書第8章に同意しながら、「共助=ケア」にも同意すべく、少しの努力をして暮らしている。それにしても著者が今は「在宅ひとり死」を研究しているという「atプラス07」での発言に興味を持った。連れ合いと愚生とは、いずれは「在宅ひとり死」を生きることになるかもしれぬ。そこに、ケアなり共助なり、福祉社会の究極の現実があるのだと思う。
本書は、「希望の書」でもあるし、「大いなる問題の書」でもある。愚生が「第?版の序」を読めるかどうか分からないけれども、著者の自愛と精励とを祈念する。