グーグルを考えるにあたって二年という時間は極めて長い。IT関係で2007年に出された単行本を2009年に文庫化することは たとえある程度の加筆をしたにせよ 野心的な試みと言える。
本書に登場するグーグルの経営陣が語る同社の使命は大きく言うと「世界中の情報を集め、検索を可能にし、全ての人に提供する」ということに尽きる様だ。
この言葉は聞いていても心地よい。しかし ここで考えるべきは 僕ら人間も「情報の一つ」として集められ、検索され、提供されうるという点だ。
実際 僕らは情報の塊である。生年月日から始まり、性別、身長体重、血液型、住所、仕事、趣味、体調といった情報で出来上がっている。勿論「自分が情報の塊だ」と考えて良い気がする人はいまい。但し 2進法という新しい普遍言語で「翻訳」される僕らは 紛れもなく「情報」そのものである。
その情報をグーグルという私企業が握れてしまう点に 怖さがある。グーグルは繰り返し「プライバシーを最大に尊重します」と言うが それもプライバシーを入手している事を前提にした発言でしかない。
本書でNHKというマスメディアが感じている不安は そこにある。また その不安を描き出している点で 本書は今なお文庫化されうる価値がある。僕はそう読んだ。グーグルは一つの例だ。情報社会と言われる中で 僕らが 何に気をつけ、何を考えるべきなのかという課題に対する 一つのケーススタディーとしてグーグルがある。それが本書の狙いなのであろう。