本書は、確かにグローバル経営論の入門書としても活用可能であるが、その全編にさり気なく散りばめられている主張として、「メタナショナル」という考え方の存在を指摘できる。メタナショナルとは、自国市場主義や大国至上主義といった、旧来の国際ビジネス上の通念から脱却する、ということだという。そういえば筆者は長く、Dozらの「メタナショナル経営」の日本企業への適用意義について、精力的な学術活動を行ってきた。決して一般的な認知度は高くないが、メタナショナルという考え方は、まさしく今の日本企業にとって直近の課題と関連する、新しい概念であると思われる。日本企業が、日本流のやり方や発想を良しとして、一歩も動こうとせずに、どんどん世界の流れから取り残されていく様から、まさしくメタナショナルという新発想への転換が求められているように思われてならない。そうした新発想の入門書として、本書はさらに活用可能であると考えられる。最後に。学術書は、現場の企業人が気が付かない、あるいは無視している部分を掘り下げ、別角度から理論的に考察することも、その目的の一つである。その意味を履き違え、「現場では役に立たない」とすぐに放り投げるのは、平凡な企業人にありがちな現場至上主義の悪しき弊害であろう。一流の企業人とは、そもそも謙虚であり、長期的な視野で理論的な思考をも併せ飲む、そうした気概を持っているはずである。本書を手にしたであろう、国際企業人であれば、なおのことである。