テロ組織アルカーイダによる「ジハード」についての分析とその対策実践書である。
タイトルも装丁も地味な本である。しかも著者は現役の警察庁公安課長。しかし、決して侮ってはいけない。類書のなかではピカイチといっていい内容だ。
なぜなら、対テロリズムの最前線にいる担当責任者の認識を文章のかたちで表現したものだからだ。そう、これは実務参考書なのだ。
グローバルに展開するアルカーイダの組織を分析するにあたって、最新の「ネットワーク組織論」を十分に咀嚼(そしゃく)した上で、従来のテロ組織とはまったく異なる、21世紀型テロリズムとの対決の方法論を思索した内容が一書として結実した。アルカーイダには中心も、明確な指揮命令系統も存在しないのだ。
著者はアラビア語は解さないが、英語その他による参考文献を広く渉猟(しょうりょう)して目を通し、また各国の対テロ責任者との対話と議論をつうじて、日本では第一級の認識をもつにいたっている。
このため、イスラーム世界に過剰に肩入れする傾向のある、日本のイスラーム研究者の論調に引きずられることなく、冷静な立場に徹することができている。「敵を知り、己を知らば・・」を地でいくものであろう。
本書は、イスラーム過激派によるテロ活動との思想戦の実態についての現況報告であるとともに、インテリジェンスとは何かについての実践書である。遠い国の話ではなく、まさにいまこの国のなかで実際に発生している話なのである。
対テロ実務書としてでなく、「ネットワーク組織論」としても読み応えのある内容となっていることも付記しておこう。
もっと広く知られていい好著である。