今回のテーマである「国家戦略」は従来の著作でも何回となく言及されていますが、急速に変化する環境(技術や他国の目論見)も含めて、総合的に記述されています。RFIDや通信企業の分割後の状況など、一般新聞では報道が途絶えがちな内容が具体的に記されていて、その後の経緯を知ると知らないとでは受ける印象ですら雲泥の差だと改めて実感します。
TRON普及に尽力されているだけあって、世界レベルでのスタンダード策定にまつわる折衝関連部分は、開発者自身がタフネゴシエーターであることの必要性が、きれい事だけでは済まない脂ぎった雰囲気を醸し出しつつワイルドに語られています。
ただ、教育等に関する3章で、法治国家として大量の法整備を急いだ明治元勲らのビジョンの正しさ云々に記述については釈然としません。江戸時代でも識字率は低くなく、古くから律令制の歴史もあり、法整備を急拡大させても、国民が順応できた結果であって、当時の元勲らがそこまでのビジョンを練っていたかは疑問に思います。
明治は廃仏毀釈の例もあり、技術、法律のみならず、文化等まで幅広くカバーした国家戦略が本当にあったのか? 他の章に比べても論調がかなり粗く感じられましたので、☆1つマイナスとしました。