世界最高の権威をもつ文学賞のひとつで、イギリス連邦およびアイルランド国籍の著者によって英語で書かれたその年に出版された最も優れた長編小説に与えられる、「ブッカー賞」’08年度受賞の栄誉に輝いたアラヴィンド・アディガのデビュー作。
この物語で描かれているのは、BRICsの一角として注目され、経済発展が進む一方で、依然として“カースト”が存在し、「一握りの人間が残りの九十九・九パーセントの人間をあらゆる面で強力に、巧妙に、狡猾に教育して、永遠の奴隷にしたてあげてきた」(170ページ)究極の格差社会<闇>と<光>のふたつのインドである。
本書は、インド南部で、ITとアウトソーシングの分野で発展著しい高原都市バンガロールの起業家‘わたし’が、まもなくインドを訪問する中国の温家宝首相に宛てて7日間にわたって綴る手紙の形式をとっている。
そこでは、水道も下水処理設備もないごく貧しい<闇>のインドの一家で育ち、デリーで富豪のお抱え運転手となった‘わたし’が、なぜ主人を殺し、その金を持ち逃げし、<光>のインドの起業家になったか、そこに至るまでの半生の日常が、静かにせせら笑うかのような、いささか諧謔口調で、しかしその根底に“暗い”何かを含ませて語られている。
経済ジャーナリストの著者が、あえてノンフィクションやルポルタージュの形式をとらず、‘わたし’が語る手紙という小説仕立てで本書を創り上げたことにより、現代インドの実像がよりいっそう鮮烈に、臨場感を持って、読者の胸に届くのである。