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グロテスク
 
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グロテスク [単行本]

桐野 夏生
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商品の説明

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 『OUT』 『柔らかな頬』など、単なるミステリーにとどまらない作品を生み出してきた桐野夏生が、現実に起きた事件をモチーフに新たな犯罪小説を書き上げた。自身をして「その2作を超えて、別のステージに行ったかな」と言わしめた作品だ。

   主人公の「わたし」には、自分と似ても似つかない絶世の美女の妹ユリコがいた。「わたし」は幼いころからそんな妹を激しく憎み、彼女から離れるために名門校のQ女子高に入学する。そこは一部のエリートが支配する階級社会だった。ふとしたことで、「わたし」は佐藤和恵と知り合う。彼女はエリートたちに認められようと滑稽なまでに孤軍奮闘していた。やがて、同じ学校にユリコが転校してくる。

   エリート社会に何とか食い込もうとする和恵、その美貌とエロスゆえに男性遍歴を重ねるユリコ、そしてだれからも距離を置き自分だけの世界に引きこもる主人公。彼らが卒業して20年後、ユリコと和恵は渋谷で、娼婦として殺されるのだった。

   いったいなぜ、ふたりは娼婦となり、最後は見るも無残な姿で殺されたのか。そこに至るまでの彼女たちの人生について、「わたし」は訳知り顔で批判を込めて語っていく。しかし、ユリコと和恵の日記や、ふたりを殺害した犯人とされる中国人チャンの手記が発見されるに従い、主人公が本当に真実を語っているのか怪しくなってくる。つまり「わたし」は「信用できない語り手」だということが明らかになってくるのだ。その主人公に比べ、日記であらわになるユリコと和恵の生き様は、徹底的に激しくそして自堕落である。グロテスクを通り越して、一種の聖性さえ帯びている。

   読み手は何が真実か分からなくなるかもしれない。しかし読み終わったとき、この物語に不思議な重層性を感じるだろう。(文月 達)

商品の説明

第31回(2003年) 泉鏡花文学賞受賞

登録情報

  • 単行本: 536ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2003/6/27)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4163219501
  • ISBN-13: 978-4163219509
  • 発売日: 2003/6/27
  • 商品の寸法: 19 x 13.6 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (138件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 112,648位 (本のベストセラーを見る)
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最も参考になったカスタマーレビュー
12 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By blah
形式:単行本
東電OL殺害事件が元になっているので、そちらも一応チェックして読み始めました。

この作品はどうなるかはあまり重要でないのでしょう。あまりに有名な事件がモチーフになっているのですから。上巻と下巻に別れているけど、毛並みがだいぶ違います。

上巻は女子校を舞台とした昼間の世界、とはいえ、鉛色の空が見えてくるよう。物語はテンポよく進み、どんどん読めてしまいます。学校の中ということもあり、事件性は希薄で、そして誰もが経験もしくは触れたことのある、からかいや、ちょっとかわったクラスメイトが描かれています。

下巻はもう漆黒の告白です。そして、普通の世界ではない、あちら側の視点から語られる告白。容疑者の告白にはやや冗長な部分もあるものの、下巻全体を通して読み返したくなるようなフレーズや情景が満載。異様なハイテンションと崩壊の描写は不気味で、見てはいけない物が露見してしまったようでもあり、同時に何も守る物がない、捨てた潔さも見え隠れする。

ラストは期待しない方が良い、むしろ、この作品への評価はラストによって影響を受ける物ではないはず。
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12 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
この本を読み、唐突ですがイヴリン・ウォーの「ブライズヘッド再び」を思い出しました。一次大戦と二次大戦の間のイギリスの上流階級で、10代の終わりに深く関わった友人たちが中年近くなって再会する話です。アル中になったり疲れたり傲慢になったりしても、若いとき芯になっていた美点は損なわれず、そのまま持ち続けていました。

グロテスクの主人公たちは高校時代の醜さをさらに醜くしている。(自分の美しさにさえ無関心なユリコは除く。)やりきれないのは、和恵の家庭はどこにでもある平凡なものですし、学校も会社も多少の誇張はあっても現実そのままということです。(均等法以前の四大卒女子の扱われ方なんてあんなものです。)幻想を持つことが出来ず、現実の耐え難さにいちいち傷ついていたら怪物になるような状況ということでしょう。フィクティシャスな「出口」をほのめかして終わる「Out」に比べ、現実をつきつけられて憂鬱になりますが、自分や周囲について振返る契機になりました。

このレビューは参考になりましたか?
64 人中、58人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
佐野氏の「東電OL殺人事件」を読んだ時に妙に引っ掛かったのは、筆者の使う「堕落」という言葉だった。この本の底流には「娼婦になること」=「堕落」という社会的な決め付けのようなものが先にあって、それから高学歴を持った女性が娼婦になった「堕落」はどうして起こったのかが書かれているように感じたのだ。娼婦になることが堕落でない、と言いたいのではない。ただ、そうした決め付けが、事件を外側から捉えただけで、被害者の内面にたどり着いていないもどかしさのようなものに結びついていると感じたのだ。被害者の内面を描くことは、むしろフィクションでなければ不可能なのかもしれない。

しかし、だからと言って本作品が被害者の内面を完璧に暴いたものだと考えている訳ではない。小説である以上、それはあくまで作者の想像・創造の中のものでしかないからだ。ただ、この作品の中で「娼婦になること」=「堕落」という単純な図式で割り切れないものが描かれたように思うのである。

作品は4人の女性の独白の形で進んで行く。違う人物のはずなのに、どこか区別が曖昧なのは、この4人が別の人間でありながら、実は「女であること」に縛られた、同じ人間の別の相であるからではないのか。特にユリコの姉は、ユリコ自身ではないのかとすら思ってしまう。ユリコの美貌を厭い、憎んでいたのは、ユリコ自身も同じだったのではないか。彼女の名前が最後まで語られなかったのは、そこに理由があるように思えてしまう。

4人が見ている周り人々の姿は、どこまでが真実のものであるのか。誰かの目を通して見えてくる誰かは、その見つめている人の目からは逃れることができない。そこに見える歪みは、見つめている本人自身の歪みなのだ。

結局、娼婦になった彼女たちは、娼婦になることでしか自身を救えなかったのだ。どんな自分であれ、醜かろうと、仕事ができなかろうと、他から「女」であること認められ、自分自身に「女」であることを実感させてくれたものが、娼婦であったのだから。それを「堕落」と言うならば、その通りであろうが、少なくとも、この作品の中で彼女たちは、娼婦になることで、さまざまな差別からの自由を得たのであると思う。

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毒毒・・・快楽
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