大不況が起こり、徐々に回復にむかう端境期は社会構造が大きく変化している。筆者はこれを「グレート・リセット」と呼ぶ。現在は工業経済からアイディアに基づいたクリエイティブな経済に移行する第3のリセット期であるという。本書は、そうした社会構造の変化と、主に北米(USA、カナダ)の都市の盛衰をたどり、未来の都市と社会の姿を描くことを狙いとしている。
広大な面積を持つ北米の諸都市を題材にした本書は、日本に住むものにとってその価値が半減するが、ここで書かれている都市の姿を日本に当てはめて考えるといろいろな示唆を読み取ることができる。確かに、小さい島国に密集している日本の都市感覚からいえば、あてはまらないものもあるし、ここで描かれている未来が日本では既に実現できているものもある。しかし、産業構造が日本よりも進んでいる米国の都市の姿に日本の都市の未来を読み取ることができる。
本書を読むと、デトロイトなどの工業都市の衰退の姿に驚かされる一方で、多様性、可動性、柔軟性が脱工業化社会、および未来の都市のキーワードとして浮かび上がる。いくつかの論点を挙げると、
・ニューヨーク、ロンドンが金融センターにとどまり続ける。なぜなら、東京、上海、香港は前者ほどの多様性を持っていない。
・現在は企業都市よりも元々多様な知識ワーカーのいる国立都市(ワシントン、オタワ)に人が集まっている。
・複数の都市を包含するメガ・リージョンが経済の主体となる。
・巨大都市では、新陳代謝が激しく、イノベーションが迅速に起こる。
・そうした地方に権限委譲して現実に対応できるようにするべき。
・若者は幸福の場あるいは出会いの場を見出せるクリエイティブな仕事に進んでいく。嗜好も贅沢品から経験に対する出費に変わってきている。
・持ち家の時代からレンタルの時代へ。持ち家願望は脱工業化社会の経済には合わない。福利厚生も持ち運べる必要がある。
・金融は、資本と優秀な人材を吸い上げ、自己利益に投資された。金融の本来はイノベーションを助け、真の経済発展をさせるべき。
・政府予算は、古い経済(道路建設など)に回すべきでなく、新しい経済(アートや科学)の創造に向けられるべき。
・アメリカの3/4が車通勤。公共交通機関の発達しているニューヨークがもっともグリーン。渋滞に課金するのは経済学の基本。
・アメリカは高速鉄道は新興国並み。高速鉄道により移動時間を縮め都市を活性化させる
・グレート・リセットは上からではなく、下から有機的に盛り上がっていく。
本書のような視点で日本の都市を論じてみることができれば面白いように思う。