本書に描かれるスペイン風邪は実に恐ろしい病気だ。感染力が極めて高く、症状は急速に現れる。患者はチアノーゼで肌の色は黒くなり、鼻や耳からさえ出血しする。患者を検死した医学の権威は「これは何か新種の感染症か伝染病に違いない」と言った。だが「ただのインフルエンザだった。」
本書では流行の発生と蔓延の経緯、背景となる第一次大戦下のアメリカの社会情勢、病原体の究明と治療法の開発に挑む医学者の挑戦と挫折が余すところ無く書かれた510ページに上る大作で読み応えがあることは間違いない。
だからといって小難しい専門書では決してなくむしろ伝染病を扱ったパニック小説のように読める。そして読後には身近な病気であるインフルエンザに関する認識が一変するに違いない。