1947年生まれのアフリカ史研究者が、東南アフリカの巨大石造遺跡グレートジンバブウェを地域の社会史に内在する論理の中に位置付けるために、1999年に刊行した本。集権的国家・交易都市の栄えた西アフリカや、小さな無頭制社会が点在する東アフリカ内陸部に対して、東南アフリカは地勢的位置による孤立的・自生的文明、苛烈な自然による人口の希薄さ、不断の移住によるサバンナ荒野の開拓、それゆえの統合と分散のせめぎ合いによって特徴づけられる。ザンベジ川とリンポポ川に挟まれたジンバブウェ高原への鉄器農業社会の到来は、紀元前後のバンツー人(その一分枝がショナ語を話す人々)の南下に由来し、以後数百年をかけて文化の基層部が形成される。続く950〜1700年頃には牛牧の展開、金などの遠隔地交易の発展が見られ、それらを基盤にショナ系のグレートジンバブウェ(後に北部のムニュムタパ国と南部のトルワ国に継承される)に代表される広域国家が成立する。1700〜1890年の近世には、インド洋交易の衰退により、チャンガミレ戦争を契機に、小国家の分立、人的資源の高度な動員(軍事専制・集約的農業)、世代間対立の激化、高原南西部での非ショナ系ンデべレ人の台頭が顕著になるが、1890〜1980年にはイギリス植民地支配の下、突如世界資本主義体制に組み込まれ、1980年以降の独立・アフリカ人政権に至る。本書はこのうち主として950〜1890年頃を扱い、考古学・歴史学・民俗学の成果を駆使して、グレートジンバブウェ遺跡が決して周囲のアフリカ文化と断絶したものではないことを強調し、アフリカ社会を歴史的に見ることの重要性を説く。現地史料の欠如ゆえ推測に頼らざるを得ない部分が多いのは仕方ないが、著者は最新の成果に基づき堅実に史実を確定しようとしており、中近世東南アフリカ社会史の平易な入門書・概説となっている。