既発の『ザ・グレン・グールド・コレクション』からバッハの演奏を集めた1枚。この値段でこれだけの映像が堪能できるというのはすごいことだ。個人的には、1964年の『ゴールドベルク変奏曲』の映像がすばらしい。もう何回も見ているが、他のCDや映像では見られない解釈のもとで演奏されており、興味が尽きない。そして、貴重でもある。
まずその構成がグールドらしい。当然、番組のなかで全曲を演奏するということは時間的に不可能だったろうから、アリアから始まり第3、6、9、12、15、27変奏とカノンのみを順に演奏していくというものになっている。1つ1つの演奏は、装飾(トリル)を最低限に抑えて演奏しているようだ。特に最初のアリアが他では聴けないような快活さに満ちている。そのことによってよりバロック的な雰囲気を醸し出すことにも成功していると思う。
わずか8分ほどのなかに組み込まれたこれらの変奏は部分部分の抽出に過ぎないのだが、特筆すべきは、グールドが演奏すると互いに有機的に絡み合っているかのように思えてくることだ。『ゴールドベルク』という大きな宇宙から別の小宇宙を作り出しているといえばよいだろうか。これによってグールドは各変奏同士の様々な組合せが可能であることを教えてくれるし、そこにこの変奏曲の広大な宇宙を感じることができるはずである。