全435ページ、一段で、第5章+エピローグの本作。ジャンルとしては、ピカレスクものだが、リアリティがないので、ファンタジーの範疇だと思います。現代の日本の問題点をテーマにして、謎の人物グレイの犯罪もユニークなのですが、全体的に登場人物の描写に奥行きが無く、セリフだけが浮いていて、できのわるいアニメを見ているような感覚が最後まで続きました。
一番問題なのは、全く「傍観に徹した」主人公だとおもいます。この主人公、かなりのダメダメ男で、この男の不幸な人生のほとんどは「おまえが悪い!」と言いたくなるような感じですが、オープニングから435ページの最後に至るまで、全く成長せず、主体性もないのです。「ええっ、こんな男に任せて大丈夫?」と読んでいるこちらが不安になりました。
現実に起こった事件に対し、作者なりの怒りをぶつけて、それが執筆の動機になっているような節も読み取れますが、キャラクターへの洞察力がいまいち薄いので、読み手に伝わりません。作者と編集者は、もっと内外の優れた作品を研究して、作品を仕上げて下さるように思います。
あと、同じ内容の文章が章が変わっても繰り返し書かれているのが、数ヶ所見受けられました。これは、作者のメッセージとして言いたいことは、何回も言っとこうという、精神のあらわれなのか? おかげで、その内容はすり込まれましたが、それって小説の面白さを阻害する行為だと思います。
本当は星をつけたくないのですが、作者が新人であるということも考慮して(本当は星ゼロだとレビュー出来ない)星一個をつけます。よろしくお願いします。