繊細で落ち着いた色調の表紙。中に使われているカット画も味わい深いです。
書名の「グリーンフィンガー」とは、訳者のあとがきによると「植物を育てるのが上手な人」のことらしい。「庭」と言えばバーネットの「秘密の花園」等が有名ですが、子供達や老人が「庭」を慈しむことで笑顔を取り戻すという内容はこのお話も同じです。
ただ、さすがに現代作品だけあって一筋縄では行きません。学習障害に苦しむ子供。行き場を失った老人の悲しみ。破局に向かう両親と、心を痛める子供達の葛藤・・・。現代社会の病理とでも言うような部分が描き出されてかなり辛い展開が続きます。
主な登場人物は小学生位?の女の子ケイト、その弟マイク、そして幼い妹エミリー。ケイトの両親と、ケイトの友達のルイーズ、ルイーズの祖父ウォルター・・・と言うところ。
子供達とウォルターの交流から「失われた庭」が蘇り、それぞれの苦しみからも解放されるという風に、「ハッピーエンド」の結末ではありますが、「人は変わってしまう」「みんな・・・後戻りできない」という言葉が表すように、「未来の事は分からない」という「現実」を受け入れていく 子供達の様子も描かれていきます・・・。
児童書としての「古典的」ストーリーを期待していると面くらう方もおられるかも知れませんが、少しずつ姿を現わす庭の光景や子供達の笑顔は魅力的です。ケイトの年齢は書かれておらず、読む人の想像に任せられていますので、身近な子供達を思い浮かべて読んでも良いでしょう。
日々土に触れ、草花を愛でる時を過す内、老人ウォルターに似た「グリーン・フィンガー」となっていく少女ケイトの物語は、蘇った美しい庭がもたらす「奇跡」を通して、辛い現実から逃げることなく、自らの足で立ち上がることの大切さを実感させてくれます。
勉強とゲームに明け暮れる子供達にこそ読んでもらいたいお話。もちろん、仕事や遊びで疲れ切った大人にもお薦め。