アメリカを代表し、ニューヨーク知識人の一翼を担った美術批評家クレメント・グリーンバーグの評論を編んだ1冊。現在日本語で書かれ、購入できるのは本書のみ。グリーンバーグは、伝統的なヨーロッパ芸術は20世紀に入り、その芸術性と前衛性に翳りが見え、その限界を超えうるのはアメリカの前衛だと考え、その典型的な芸術家にジャクソン・ポラック(グッゲンハイム美術館に彼の作品がある)に着目して19-20世紀の主要な芸術思潮を展望する。
特に印象派を開眼させるマネの存在を中心に、技法よりも自己の確立をキャンバスに描きこんだことを高く評価する。この評価は後のジョルジュ・バタイユやミシェル・フーコーよりも数十年速い、その慧眼な観察をまとめた「アヴァンギャルドとキッチュ」を先頭に、最後は彼が通いなれたモマ(MoMA)に多数の作品が残るマティスで最後を飾る卓抜な美術批評15本を納める。日本語版を編むにあたり著者にライン・ナップを確認させた周到な編集作業を経ているので無駄がない。
ニューヨークのグッゲンハイム、モマなど20世紀の作品を鑑賞する予定のある読者は必読。現代芸術へのアプローチ方法を教えてくれる珠玉の批評で、素人にも楽しめる。