私が初めてピアの協奏曲を聞いたのが実はこの盤です。購入したきっかけは、
当時評論家としても活躍していた作曲家の諸井誠氏が、本の中で絶賛していたのが
きっかけでした。
聴いてみて、絶賛している理由がよくわかりました。これほど雄大でしっとり
していて、迫力のある演奏は聴いたありませんでした。それ以降、リヒテルの演奏
を色々聞くようになったのは言うまでもありません。
ただ今振り返ると、色々ボロは出てきます。
グリーグは特にヤルヴィの活躍以降、様々なCDが出て、より知られるように
なったと思いますが、私はこの作曲家はより端正で(いい意味で)線が細かい音楽
を嗜好する人ではないかと思います。シューマンは、リヒテルと同じ旧ソ連出身の
ソフロニツキーで聞いてよく分かったのですが、非常に精細で移り気の激しい作曲家
だと思います(ソフロニツキーはその性格を巧く表現していると思います)。
そう考えると、リヒテルのこの演奏はどうなの?という見解が生まれるのも仕方
ありません。事実、英グラモフォン誌では、管弦楽も含め「自己中心的な」「我々の
求めている曲の姿からはずれている」と散々です。確かにグリーグやシューマンの
ピアノ協奏曲を作曲者の立場に立ってみると、例えば、カーゾンやリパッティ
の方が色々な発見ができて面白いと思います。いわゆる「ファースト・チョイス」
の盤として、この盤はお薦めできないと思います。
しかし、だからアウトと思うのはよくない考えだと思います。個人的な意見で
申しますと、確かにシューマンは聞いた当時から、違和感があってほとんど聞き
ませんでした。それはリヒテルがシューマンに合わないという訳でなく、シュー
マン特有の器楽的な管弦楽手法を巧く表現できていないオーケストラにも問題が
あると思います。ただグリーグの演奏に関して言えば、オーケストラにもう少し
精細さを求めたいと感じるものの、リヒテルの演奏はピアノの表現を限りなく追求
しており、非常に素晴らしいと思います。正直言って、ピアノの協奏曲で、これほど
ピアノでワクワクドキドキする演奏は他にはあまりないと思います。そのため
リヒテルのファンだけでなく、ピアノのファンであれば一度聴いても損はしない
と思います。多分、当時の自分同様、リヒテルの演奏にハマるでしょう。。。
ちなみに、録音状態はボロボロですが、64年のキエフのライブは、この盤の演奏
よりリヒテルがブチ切れていてより堪能できると思います。オーケストラはミスも
あってあまり良くありませんが。。。